その視線がこっちに向くことがないことを理解したのはいつだったか。わかってしまったらどんどん身動きが取れなくなって。今更好きだと言ったって空しいだけだ。だから黙って見ていることに決めた。何もしないことは思うよりも難しいけれども、それで良いと思うから
。
「なぁ、なんで俺の料理は誰の口にも合わないんだよ」
「お前の味覚に問題があるんだからしょうがないだろ。」
「……、」
なんでこいつは、無理だって言われることをやり続けられるのか。理由はわかってる。気づかない振りをしたいだけさ。なんで俺が、とか思いつつ一人で料理をさせたらどうなるかわかったもんじゃないのは重々承知なので今に至る。あー、退屈。
「あぁっ!!クソッ、」
「ちゃんと食べ物作れよー」
「当たり前だ!!バカにしやがって、」
言ったそばから何やってるんだよ、調味料を目分量で入れたらイギリスの場合は失敗しかねないぞ?だから、小さじをちゃんとつかえって。
「こんなんじゃ……、またアメリカに……。」
独り言が聞こえてくる。ほら。俺は気づいてる。お前はアメリカしか見えてないんだ。その感情が恋愛感情なのかはわからないけど。
だからって別にアメリカを妬むとか、そんなことはない。だけど、ちらっとでいいからこっちに目を向けてくれないかと期待してる自分がいる。そのことが腹立たしい。諦めきれないなんて、どれだけ女々しいんだか。
どれだけ口にしようと思ったことか。それが無駄だと知った上で実行に移すなんて出来なかったけどさ。君の隣に俺が入れる場所はないのがわかるから。
いつまで、いつまでこのままだろう。
「オイ、フランス。出来たぞ!!」
おぉ、満面の笑み。いつでもそうしてれば相当かわいいのに、もったいない。
「オムレツと野菜スープだ。」
「それはほんとに食べられるのか?」
「感謝しやがれ、一口目を食わせてやろう」
えばるな。待ってたんだから当然だろ。
「食べたあとに無事生還できたら感謝してやらないこともないな。」
「いいから食え!!」
見た目はまぁまぁだろう、特にオムレツは。野菜スープは危険な気もするが。
じゃあ、いただくとしよう。
隣に行けなくたっていい。この時間だけは、イギリスの笑顔を独り占め出来るんだから。
私の中のフランスの立ち位置はこんな感じ。090302