会議が終わった後そのまま椅子に座っていると誰かの腕が首に絡まった。

どのくらい経っただろうか。もう誰も残っていない。
「……、動きづらい」
特に何をするつもりも(本当は動くつもりも)無いのだが、先刻からアメリカがずっと引っ付いている。 ぴったりと。何を考えてるんだ、全く。
「そうかー」
へらりと笑われた。そして悪気はかけらも無いようだ。顔が近すぎる。
恥ずかしいからやめてくれなんていえるわけもなく。そんなことを言うくらいならこのままのほうがましだと思ってしまう。 きっとうまくなんて伝えられるはずがない。とりあえず無害ではあるので放置することに決めた。

しばらくたつと、首に巻かれていた手がするりと解けた。そのまま、頬とかつねられた。 少々頭にきたけれども、あえて(そうとう我慢して)何も言わないでみる。すると、シャツの中に手が滑り込んできた。
「っ、どこ触って!!」
「だって、ほら、君が認めようとしないから。既成事実があったら逃げられなくなるだろう?」
ほらってなんだよ、おい。しかも、既成事実ってなんだ。そしてどうしてそんなに楽しそうなんだ!!
認めるって、簡単にそんなことできるわけがないじゃないか。認めたくないわけじゃない。 ただ、そうすることで何かが変わってしまうかのようで。
それを口にしてしまったときに、関係が壊れてしまうのを俺はひどく恐れている。 きっとからかわれてるのだろうと思う。それにいちいち腹を立てたりして馬鹿みたいだと思う。意地っ張りなのかもしれない。
そんな思いでアメリカの顔を覗き込んだら、
「…な、なんて顔してやがる!!」
なんかすっごく泣きそうな顔をしていて。さっきまでの楽しそうな笑顔はどうした!!
自分がこんな顔をさせたのかと思うとちょっと悲しくなった。
だって、彼は自分はヒーローだと公言していて、こんな醜態はさらさないはずなのに。 こういうときはどうしたらいいのだろう?もうわかんねぇよっ!!(半ば自棄気味。)
だから思いっきり立ち上がって後ろを向いて、それで。
キスをしてみた。
「あぁ、もう!!既成事実なんてこれで十分だろう!!十分すぎるくらいだ!!だから、そんな顔見せるなっ!!」
結構(相当)悔しかったりしたのだけれども、アメリカの顔を見たら吹っ飛んでしまった。
だって、彼は比喩でなく本当に耳まで真っ赤になっている。してやったりと思ってしまう自分に笑ってしまいそうだった。


090117